グローバルマーケティングとは?

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日本の成功体験を捨てるところから始まる

たとえ日本でどんなに人気があり、大変な成功を収めた商品やブランドでも、それがグローバル市場で成功するとは限りません。というより、成功することはまれです。しかし、世の経営者は、日本での成功体験を、どうしても忘れることができない。その結果、グローバル市場に出た時に、致命的な失敗をすることはよくあります。それは誰もが知っている大手企業でも、ひんぱんに起こります。

日本で大成功したマットレスメーカーは、自社商品の特徴のひとつである、「ご家庭で水洗いできる」という利点を欧米でも謳いましたが、誰も見向きもしませんでした。欧米ではマットレスは洗うものではなく、干すことすらしないからです。逆に「変」で「奇妙」なメッセージになりました。

日本を代表するIT企業がソーシャルメディアのモバイルアプリを欧米で展開する際、メディアにTVCMを選びました。その結果、完全惨敗で、あっという間に帰国していきました。当然です。ソーシャルメディアを使うZ世代は、誰もTVを見ていなかったからです。

日本での「成功の法則」は、経営者の心をがんじがらめにして、聞く耳を持たせません。私たちがどんなに説得しても、効果がありません。経営者は、「成功体験」から学び、それを聖書のように考えているからです。しかし、成功から学ぶものはありません。成功は「偶然」の要素が非常に多い。百の成功があれば、百通りのストーリーがあります。逆に「失敗」には法則があり、失敗から学ぶことで、同じ失敗を繰り返さずに済むのです。

グローバル市場は「火星」ぐらいに考える

グローバル市場は、日本市場とはまったく異なると、まずは考えてください。イメージは、「火星で売る」ぐらいでちょうどいいかもしれません。酸素も水もないのです。マットレスを洗うこともできません。

グローバル市場は「火星」ぐらいに考える

そこに住む人は、あなたと違うところで生まれ、違う言葉を話し、違う学校に通い、違うTV番組を見て、違う習慣の中で育った、違う人なのです。あなたは、欧米の流行を見て育ったかもしれませんが、それは「日本流に巧みにアレンジされた流行」です。家の中を土足で歩き回り、「人と違うこと」を価値だと教えられ、会議で協調性を重んじるあまり反対意見を言わない人を「存在しないも同じ」と考える欧米の文化を理解できるでしょうか。

郷にいれば郷に従え、と言います。グローバル市場に出る時は、「ブランドをイチから作り直す」気持ちで取組むのがよいでしょう。最初から商品特徴を見直し、その中身が変わらなくても、その言い方、見せ方、訴え方を徹底的に考え直す。調査にかけてもいいでしょう。現地のお客さまの意見を聞いてください。もし調査費用がないなら、テスト販売や、無料で一定数配ってもいい。そして、その反応に耳を傾けてください。商品やサービスはいつでも、「お客さまの要求を満たすもの」でなければならないのです。でなければ、市場に存在する意味はないのです。

クリエイティブ表現はもちろん、商品価値やベネフィットまで見直す

パラダイムシフト

日本企業は、日本で販売して人気のあるものを、そのままグローバル市場に出していく傾向が強いと言えます。「現地ブランドをイチから立ち上げる」ことに消極的です。というより、否定的です。なぜでしょうか。

おそらく、「ブランドとは何か」を知らないという一点でしょう。新商品のブランディングとは、どんな大企業の宣伝部長に聞いても「TVCMを多く打って、店頭にならべて、キャンペーンやること」ぐらいしか出てこないのではないでしょうか。
ブランドとは、左脳で納得できる「機能価値」と、右脳で感じる「情緒価値」と、社会を少しでも良くしたいという「社会価値」の3つから構成されます。商品やサービスには、なにがしかの機能は必ずありますから、機能価値は日本人がとても理解しやすいものです。商品特徴と言ってもいい。

情緒価値は、かっこいい、かわいい、おしゃれ、都会的など、「好き・嫌い」を創り出す要素です。当然、味や機能からくる心の動きなど、商品特徴から来る情緒もありますが、多分に時代背景や流行などに左右される視覚的要素、たとえばパッケージやロゴなどの「見た目」、広告コミュニケーションなどのクリエイティブから起因するイメージ、ターゲットのコンシューマーインサイトなど、多くの変数の乗数が情緒価値を作り上げます。

ですから、商品特徴、コンシューマーインサイト、時代のキーワードや意識、クリエイティブなど、総合的に考えていく。この時点で、チームには現地に精通したクリエイティブディレクターやマーケターが必要です。どんなに日本で有名なブランドも、グローバル市場では、赤ちゃん同然だと言うことを最後まで忘れないでください。

グローバルマーケティングコンテンツで大事なこと

ポテンシャルが最も高いターゲット層(Prospectsと呼びます)が決まったら、コンテンツの出口を決めます。現在であれば、ソーシャルメディア一択です。ソーシャルメディアで何をどう発信し、彼らにどのような行動をさせたいか、できるだけ具体的にイメージしましょう。自社ECサイトへ誘導し買わせるのか、Amazonへ行かせるのか、実際の流通に乗せられるなら、知名度が命になりますから、大規模なメディアキャンペーンが必要です。

コンテンツのキングは動画です。動画は、機能価値を情緒的に伝えることのできる、唯一のコンテンツです。昨今、機能価値は、競合他社と大差ない状況です。であれば、どう差別化するか、いえ、差別化だけでは足りない。どう「魅力化」するかが大きな課題です。その時、情緒価値が物を言います。

ターゲット層とコンテンツの出口イメージ

コンシューマーは、いいか悪いかの「是非」で商品を購入しません。「好きか嫌いか」で区別します。信用できる、確かなものだ、品質がすばらしいなど、機能価値的な言い方をしますが、結果、「だから好き」という感情が、クレジットカードを財布から出させるのです。

ですから、「どうしたら好きになってもらえるか」を徹底的に科学する。それは人と人との関係に似ています。嘘ばかりつき、不潔で、身なりを気にせず、いいかげんで、信用おけず、自分のことばかり話し、間違いばかりする人は好きですか?その逆を考えれば良いのです。

コンテンツ制作で大切なポイントは?

日本人が考える「かっこいい」と、欧米人のそれとは、かなり違うことを理解してください。あなたはハリウッド映画をたくさん見て、自分の「かっこよさ」をそこから学ぶことはあるでしょう。しかし、欧米人は日本映画を見て、そこからかっこよさのスタンダードを得ることはありません。「七人の侍」を見て、かっこいいと思うかもしれませんが、それは70年前の映画なのです。

星、ポイントイメージ

ブランドに沿った、マーケティング上で正しいクリエイティブコンテンツを作りたいなら、迷わず、現地マーケットを知るクリエイティブディレクターに任せるべきです。制作チームも同様です。日本国内で「世界的なクリエイティブディレクター」と言われる人も、実際には海外ではほぼ無名です。グローバルで長年もまれてきたクリエイターの経験は、そもそもの才能など軽々と超え、正解に最短で近づけます。それこそ、もっとも安価でリスクの低い方法でしょう。

アウトレット(コンテンツの出口)は主にどこか?

前述した通り、欧米のコンシューマー、少なくともティーンエージャーからX世代(〜50代後半まで)を中心とする「生産者層」が毎日もっと長時間接触するメディアはソーシャルメディアです。Z世代は主にInstagram、Snapchat、TikTokなど、年齢が上がるとFacebookへと移行する特徴があります。ビジネスであればLinkedinでしょう。ですから、まずソーシャルメディアをタッチポイントの中心にすえて(予算が許せば複数のチャネルで)、日常的にターゲットに接触しましょう。

ターゲットイメージ

大切なことは「競合よりも頻繁に接触すること」。セールスマンの売り上げは、その内容や能力に関係なく、 訪問回数に比例します。ソーシャルメディアのタッチは、セールスマンの訪問と同じです。ソーシャルメディアを中心に、彼らとのエンゲージメント(昔の言葉で言えば「認知+理解」でしょうか)を高めます。

それ以外は、看板、イベント、インフルエンサー、PRなど、その商品にあった、複数かつ複合的なコミュニケーションを展開してください。PRやインフルエンサーは「第三者の声」として、ブランドの信頼度を高める効果があります。

コンテンツの評価はどうするか?

各キャンペーンは、それぞれに効果(クリックスルー数、ランディング数、視聴数など)を測ることができますが、これはブランドの人気度や好意度というより、個々の広告の力を計ります。ブランドそのものの強さ、全体のキャンペーンの結果は、年始のプレテスト、年末のプレテストで見るか、毎月末に結果を並べて、その成長などから判断しましょう。

同じ商品を違うクリエイティブで同時に同じプロファイルの顧客にランダムに流して、個々の結果を見比べるABテスティングも古くからある効果的なキャンペーン方法です。特にオンラインのみで結果が出るECサイトでの販売などは、この方法は「効率を永遠に追求できる」ひとつのソリューションと言えます。

広告を地域別でわけ、表現を変え、結果を見ることもできます。これは同じようなプロファイル(年収、人種、年齢など)を持つ2つの地域でやってもいいし、違っても構いません。注意点は違っている要素を複数もった状態でテストしないこと。何が直接影響したのかがわからなくなってしまいます。

グローバルマーケティングの未来は?

今、日本経済は大きな曲がり角にきていると思います。

バブル前後のピーク時、日本の輸出はピークに達し、世界中に日本製品が席巻しました。自動車、家電製品を代表する、いわゆる「安価で性能の良い良品」は、世界中で受け入れられ、好評を博し、時には貿易摩擦を起こすほどでした。

時はすぎ、さまざまな精密機器はコモディティ化し、そういったものは韓国や中国など、後から来た新興国に抜かれていきました。いつの間にか、ITの世界、ソフトウェアの世界でも、日本は、周回遅れだと思っていた彼らに抜かれています。 最近トヨタ自動車が数千億の投資をEV開発と生産のため、電池やモーターの拠点に行ったという記事がありました。

しかしどこにも、「ソフトウェアへの投資」の記述がありません。テスラをあそこまで巨大化させたのはハードウェアもさることながら、その肝はソフトウェアです。この記事を見て、私はまた心配になりました。 1億人以上の人口と、個人所得の高さ、それに合わせた消費高から、国内市場に偏った投資を行ってきた企業は、横並びにグローバル化で遅れを取り、特に個人消費材の世界では、日本製品は今、海外で見る影もありません。

欧米でも50年前に同じことを日本にされてきたわけですが、彼らは見事にIT化、高度サービス化の時代を自ら切り拓き、今の世界の先頭を走っています。現在、彼らに戦いを挑んでいるのは、日本ではなく、中国や韓国です。彼らは自国が遅れていること自覚していたからこそ、若い人をどんどん欧米に留学させ、彼らから学ぶことを忘れませんでした。

世界のイメージ

日本はどうするのでしょうか?この日沈む国で、ただゆっくりと沈む日を眺めているのか、明けぬ夜はないと信じ、次の朝に向けて、策を練るのでしょうか。

どちらにしても、そんなに時間は残っていないと感じます。日本にいると、そこまで強く危機感を抱かないかもしれません。ただ、海外から見ると、日本は「アニメ」と「礼儀正しい国民」の2点で誉められて、ただ満足しているだけの国に見えます。それが心配です。

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