英語が話せる人と、話せない人がいるのではない

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昔の私は、こう思っていました。
「世の中には、英語を話せる人と、話せない人の2種類がいる」。
若い頃の自分に教えてあげたい。
それ、全然違うよって。

英語が話せなかった38歳の私

空港でスーツケースを持ち、少し不安そうに立つ大人の人物。新たな旅立ちのイメージ。

私は38歳の時に、ろくに英語も話せないままアメリカに移住しました。正直、移住なんていうとかっこよく聞こえるかもしれませんが、当時の気持ちは単純でした。

「英語、少しでも話せるようになりたいな」。

今から21年前のことです。
その頃、英語がペラペラな同僚に言われたことがあります。
「英語は、ある日突然、パッとわかるようになるよ。最初は何言ってるか全然わからないけど、ある日、急に聞こえるようになる瞬間が来るんだよ」。
当時の私にはそれが魔法のように聞こえました。希望のある言葉でした。でも、正直言って半信半疑でした。そんな日が本当に来るのか?今の自分には全く想像がつかなかったのです。

確かに“そう”なんだけど、“それだけじゃない”

長い坂道を歩く人物、道の先は見えないが穏やかな雰囲気。学びの道のりを象徴。

そして今。21年経って、多少なりとも英語が話せるようになった私が言えるのは、「その言葉は、間違っていないけど、正確でもない」ということ。

英語の上達は、“突然のブレイクスルー”だけでは説明できないんです。感覚的には、こうです:

  • ゆるやかな階段を、一段ずつ登っていくような感じ
  • あるいは、長い坂道を、歩いている感じ
  • しかも、その坂道には終わりが見えない

つまり、「話せない人」と「話せる人」がいるわけじゃなく、みんながそれぞれの場所を歩いてるだけなんです。

わかると、「わからない」が増える不思議

霧が晴れ、広大な世界が見えてくる風景。新しい理解と発見の象徴。

英語が少しわかるようになってくると、こんなことが起こります。
「逆に、わからないことが増えてくる」。
わかるからこそ、見えてくる“わからない部分”。
これ、ちょっと逆説的だけど、本当にそうなんです。

しかも、その“わからなさ”が、どんどん具体的になってくる。「この単語、なぜここでこう使うんだろう?」「この表現の裏にある文化的背景は?」といったふうに。
そしてその現象は、上達すればするほど続いていく。
わかればわかるほど、「あれも知らない、これも知らない」と思うようになる。

学びって、そういうものなんだなと気づきました。
「明日死ぬかのように生きろ。永遠に生きるかのように学べ」。
マハトマ・ガンジーの言葉ですが、英語学習を通じて、私はこの言葉の重みを実感するようになりました。

言語の向こうにあるもの

英語を学ぶというのは、単語や文法を覚えることだけじゃありません。
その背景にある文化、歴史、価値観も一緒に知ることになります。
つまり、どんなに分厚い小説よりも、どんなに巻数の多い百科事典よりも、ずっと情報量の多いものなんです。
だからこそ、「わかるほど、わからなくなる」現象が起こるのも、ある意味当然なんですね。

英語が通じる理由は、言葉だけじゃない

多様な背景を持つチームが協力し、アイデアを共有している様子。コミュニケーションの力を象徴。

私は広告制作の現場でディレクターとして働いています。撮影では、アメリカ人のカメラマンや照明、グリップ(特機)スタッフなど、多くの人に英語で指示を出さなければなりません。
でも、実はこのときの英語はそんなに難しくない。
なぜなら、現場の常識が共有されているから
撮影現場というのは、国を超えて“共通言語”があるんです。
だから、単語一発で通じる。言葉が完璧じゃなくても、通じてしまう。
これは長年、同じ業界で経験を積んできたからこそ感じる“安心感”でもあります。言葉を学ぶ以上に、同じ背景を持つことの力を強く実感します。

共有されている「世界」があるという強み

これは、どんな職種でも共通だと思います。
たとえば、フランスに修行に行く料理人。
イタリアに行く靴職人。
きっと、彼らの語学力はネイティブ並みではないでしょう。
でも、「料理を作る」「靴を作る」という共通の“背景”があるからこそ、通じる。伝わる。
つまり、言葉がすべてじゃないんです。
共有されている知識や経験があるだけで、コミュニケーションは可能になるのです。

英語力より、共有できる“何か”を持とう

同じ業界の人と英語で話すのは、全く別業界の人と話すより、たぶん2〜3倍は楽です。
もしあなたにそんなチャンスがあったら、英語に自信がなくても、ぜひトライしてみてください。きっと、思っているよりもずっと、わかりあえます。

英語と広告に共通するもの

私は広告という、「コミュニケーション」を仕事にしています。
広告で大事なのは、「まったく新しいことを言う」ことではありません。
相手の心の中にすでにある何かを、ポジティブに取り出して見せてあげる。「これ、あなたのことですよね?」と伝える行為。それが広告です。
英語もきっと同じ。
相手と共有できる“知識・価値観・経験”を探して、それをつなげる。
それこそが、私が広告の仕事を通じて手に入れた「感性の翻訳」という力です。

再挑戦のすすめ

朝日へ向かって旅立つ人物、希望と新しい挑戦の象徴的な場面。

学びには、学びを導く“次の学び”があると思います。
一度あきらめたこと、途中でやめてしまったことがあっても大丈夫。
再び始めることで、新しい景色が見えてくるはずです。
英語でも、料理でも、楽器でも、なんでも。
あなたの中にすでにある“共有できる何か”を手がかりに、
もう一度、学びの旅に出てみてはいかがでしょうか。
それは、知性の旅。
きっと、あなたの世界を広げてくれるはずです。


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